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​〔WiiU〕ゼルダの伝説 風のタクトHD

【シナリオ】 ★★★☆☆ 【システム】 ★★★★☆ 【快適度】 ★★★★☆

【サウンド】 ★★★★☆ 【満足度】 ★★★★☆ 【難易度】 やや難 【プレイ時間】 40時間

 2002年にゲームキューブで発売された「ゼルダの伝説 風のタクト」をHDリマスター化(1080p)。トゥーンレンダリングというまるでアニメをそのまま動かしているかのような技術で描かれたゼルダの世界と「猫目リンク」とも呼ばれる大胆なキャラクターデザインの変更は当時話題になりましたね。

 

 従来のカッコイイリンクが好きな人にはこのトゥーンリンクが受け付けないという声も聞きますが、個人的には愛らしくて大好きです。動きもコミカルで可愛いのですが、何より喜怒哀楽の表情が豊かなんですよね。そんなリンクを操作しているだけで、もっと言えば見ているだけでも直感的に楽しいなと、そう思わせてくれる魅力があると思うんですよね。

​●これぞHDリマスターというべき「生まれ変わった風のタクト」

 これまでいくつものHDリマスタータイトルをプレイしてきましたが、本作ほどHDリマスター化の恩恵を受けているゲームもないんじゃないかと、そう思わせてくれるほどに光と影のコントラストが「美しい」んです。時間や天候の変化で空気感がガラッと変わり、同じマップでも全く違う姿を見せます。

公式動画:ゼルダの伝説 風のタクトHD ゲームキューブ版と比べてみました。

 HDリマスター化は単にグラフィックの向上だけにとどまらずゲーム性そのものを大幅に進化させています。というのもワイド(4:3→16:9)化の恩恵で従来よりも視界が広がり遠くまで見通せるようになりました。これは特に本作のメインでもある「大海原」で大きな効力を発揮しています。ゲームキューブの頃よりも果てしなく広がる海が表現され、船旅がさらに楽しくなりました。

 HD版で進化したのはグラフィック面だけではありません。従来はマップ切り替えに使われていた十字ボタンですが、よく使うものをセッティングすることができるようになりました。特に頻繁に使うことになるタクトがスムーズに使用できるようになったのは良いですね。そのぶん通常のボタン(画面右上)に他のアイテムをセッティングできますし。

●「快速の帆」で快適な船旅が実現!

​ 本作でとにかく問題視されていたのが船旅が面倒!という点。え?それメインでしょ?船旅を楽しむゲームじゃないの?いえいえ、やってみると本当に面倒なんです。具体的に言いますと「風向きの変更」「あまりに海が広い」ところですね。

 まず風向きの変更ですが、基本的に船は追い風でないと動きません。向かい風だと微動だにしません。そんな時はタクトで風の唄を振り、8方向に分かれる風向きを変更してあげるんですね。逐一です。そう、方角を変えるときはいちいち振らないといけないんです。これがやっぱり…面倒なんですよねえ。

 もう一点はとにかく海が広いこと。いや、海のマップが広いこと自体は素晴らしい事なんですけど。ただ、海が49の海域に区切られていて、1つの海域を横断するのにかかる時間は約2分。つまり一番上の海域から一番下の海域に行くだけでも15分くらいかかってしまうんですね。一番上から一番下に行くだけなら同じ方角なのでまだ良いんですが、方角を変える場合には風向きを変える必要があるという先述した理由も相まってストレスになります。中盤以降、数か所にワープできる渦が出現するのですが、それでも根本的解決にはならず…。

 

 一説によれば、オリジナル版であるゲームキューブのハード性能では一度に大海原の広大なマップを読み込むことができず、だから海図を細分化して移動に時間のかかる仕様にしたんじゃないかとも言われています。ソースはありませんのであしからず。

​ さて。HD版ではそんな二つの問題点を一つで解決してしまう画期的なアイテムが追加されました。それが「快速の帆」船のスピードが格段に向上しただけでなく常に追い風が吹く(=風の唄で風向きを変える必要がない)というチート性能を誇ります。これを手に入れてからだともう以前には後戻りできないくらい船旅が快適になります。船旅にかかる時間が短縮され風向きも変える必要がない、なんだかゲームの本質を根底から覆してしまっているような印象も受けなくはないですが、やはりゲームは快適にプレイできることが第一だと思うので個人的にはこれで良いと思うんですよね。むしろデフォルトの帆が快速の帆でも良かったんじゃないかと思うくらいです。

​ ちなみに快速の帆入手後はいつでもデフォルトの帆と切り替えができます。バシンッ!という効果音と共に。

●ストーリーは王道だがちょっと味気なさも。

​ ストーリーは「時のオカリナ」の後の話ですが未プレイでも全く問題ありません。トゥーンであること、船旅が多いということでイレギュラーなゼルダという印象を持たれがちですが、中盤以降は「いつものゼルダ」といった展開になるのでその点はご安心を。個人的にはもっと海賊たちの活躍する場があっても良かったんじゃないかと思います。せっかく魅力的なキャラクターがいるのに勿体なさを感じました。

●トライフォース集めは緩和されたが…。

 オリジナル版で賛否(というかほぼ否なんですけど)のあったゲーム終盤の「トライフォースのかけら集め」ですが、少しだけ緩和されています。かけらは全部で8つありますが、従来ですとまずかけらの隠し場所8か所すべてのトライフォースマップを集めるという作業がありました。が、これが8→3になりました。残り5つは直接宝箱から入手できるというわけですね。中途半端に減らすくらいならトライフォースマップ自体廃止でよかったんじゃと思わなくもないですけど。

 あとですね、これ作業感を助長させてるなあと感じるのはトライフォース集めにストーリー性がないところなんですよ。まずゲーム中盤の大きなダンジョン二つをクリアして「さあクライマックスだ!」という盛り上がってきたところで「トライフォースのかけら集めないと乗り込めないゾ」と言われてまず出鼻くじかれ。そしてトライフォースになんの脈絡も所縁もない隠し場所。こういう作りだとどうしても「これただのプレイ時間稼ぎでしょ」と思わされてしまうんですよね。むしろこういう所を修正してほしかったなというのは贅沢ですかね。

●総評:移植作以上、リメイク未満。HDリマスターとしては最高峰。

 HDリマスターにとどまらない範囲でインターフェースの改良、遊びやすい改良が施されていることはここまでで示してきましたが「リメイク」と呼ぶには物足りなさがあります。具体的に言えば、新たに追加された島やダンジョン、ボス等は一切なく、あくまで修正・改善の域を出ません。ゲームキューブ版が納期等の影響で「未完成」であったことを考えると今回のHDリマスター化は「完全版」にする良い機会だったと思うのですが…。その点は少し残念ですね。

 WiiUゲームパッドのみでのプレイにも対応しています。ですが、ゲームパッドにメニュー画面やマップを常時表示、タッチ操作によるアイテムの付け替え等が非常に便利なので普通にWiiUProコントローラでのプレイをお勧めします。

​ 最後に。ゲームの難易度はゼルダシリーズの中ではむしろ簡単な部類?という話もみましたが。いやいや、普通に難しかったです。詰まりまくりました。同じ箇所で1時間2時間トライ&エラーとかもザラでした。熟練のゼルダファンからすればそうでもないのかもしれませんが、個人的には丁度よいやり応えに感じました。苦労して苦労して、ようやく閃いて先に進めたときの快感は何物にも代えがたいゼルダ特有の醍醐味ですね。

 

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