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​〔WiiU〕幻影異聞録#FE

【シナリオ】 ★☆☆☆☆ 【システム】 ★★★★☆ 【快適度】 ★★☆☆☆

【サウンド】 ★★★★☆ 【満足度】 ★★★★☆ 【難易度】 普通 【プレイ時間】 60時間程度

 まず大方のユーザーがそうであったと思いますが…メガテンとFEのコラボでどうしてこうなる!?というのが第一印象ですよね。メガテンといえば硬派でダークな世界観のRPGですしFEも最近はややオタ寄りになっていますが元々は硬派で高難易度のS・RPG。この二つがコラボして出来上がったのが芸能界を舞台に歌って踊ってとにかくキラキラしたRPGというのはまさしく合体事故としか思えない事態であります。

 ところが、蓋を開けてみると意外にも中身はしっかりメガテンなんですね。特筆すべきは何といってもメガテンとペルソナの良いとこどりをしてさらに昇華させた戦闘システム。主人公イツキにはアイク(剣)、ヒロインの織部ツバサにはシーダ(槍)といったように歴代FEシリーズのキャラクターが「ミラージュ」として憑依しており(まんまペルソナですね)、各々得意武器が設定されています。FEシリーズでおなじみの「三すくみ」(剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強い)が採用されており、キャラクターを入れ替えながら相手の弱点を突いていくことになります。本作ではこの弱点を突くことで「セッション」が発動する独自のシステムが取り入れられています。

​●爽快感抜群のセッションシステム

 セッションというのは要は自動で発動する連携ですが、これが非常に爽快感があって気持ちイイ。例えば剣で弱点を突いたときに「剣追ブリザー(氷結)」というセッションスキルを誰かが付けていればそれが発動(戦闘に参加しておらず控えでも発動します)。そして「氷追の○○」というセッションスキルを他の誰かが持っていれば先ほどのブリザー(氷結)にセッションしてさらに繋がります。セッションを繋げば繋ぐほどスターダム(武器やスキルの開発に必要なアイテム)やお金が手に入り、相手にターンを回すことなく一気にせん滅することも可能です。セッションを狙っていくことも当然可能ですが、敵をターゲットする際に自動でセッション一覧が表示されるので難しく考えなくてもOK。とにかく弱点を狙って行けば問題ありません(ほかにも弱点を付けるスキルがあるならよりセッション数の稼げる方を選択すると良いでしょう)。

 先述した通り「私も行くよ!」「シクヨロ~」といった掛け声と共に派手な演出でセッションしていく様は爽快感があり見ていて飽きません。控えメンバーも含めて仲間みんなで戦っている一体感があるのがGOOD。ただ、終盤はセッション数も二桁を超えていくことがザラなのでやや冗長気味になりがちで、演出ショートカット機能はあっても良かったかなとは思います。また、ゲーム中盤以降デュオアーツと呼ばれる特定キャラクター同士の特殊連携がセッション中にランダムで使えるようになり、これが発生するとセッションが再構築されます。運が良ければセッション→デュオアーツ発動→再度セッション→さらにデュオアーツ発動→再度セッション…のようにずっと俺のターン状態が実現することも。ここまでくると最高に気持ちいいんですが、問題はセッションが二桁に達するのもデュオアーツが揃うのもゲーム終盤になってからという点なんですよね。戦闘が最高に楽しくなるまでの期間が長めなのが、ちょっと勿体ない。

 勿体ないと言えば主人公であるイツキが戦闘参加固定である点もですね。せっかくパーティメンバーがイツキを除いて6人もいるのに、2枠を6人で回さないといけないんですよね。後述しますがサブストーリーを進めるために結局パーティキャラを満遍なく戦闘参加させる必要があるので、ここはイツキもチェンジ可能にするべきだったと思います(従来のメガテンのように主人公が死んでも即全滅とはならないのでなおさら)。

 敵側もセッションを駆使してくるので弱点を突かれると戦況は一気に悪化します。特に敵の数が多いときは注意しましょう。パーティ参加メンバーは3人なので、1人倒されると立て直しが結構大変です。

●擁護できないレベルのお粗末なストーリー

 ストーリーに関して、物語の核心に触れない程度に。FEほとんど関係ないやん!というのはまあ置いておいて。芸能界を舞台にしたストーリーという点で見ても、ちょっとお粗末な展開が目につきました。イツキやツバサが芸能界を通じて芸能人としても人間としても成長していくサクセスストーリーが前提にあるのですが「なぜ芸能人になりたいのか」「なぜスターダムを駆け上りたいのか」、そのあたりの動機の弱さが気になります。特に芸能人としての努力や研磨しているシーンもないままストーリーが進むとともに芸能人としても成り上がっていく様は理解に苦しみます。そりゃ確かにミラージュマスターとしての成長が芸能人としての成長にもつながるとは言ってましたけど…。ツバサやトウマはともかく、主人公であるイツキに関しては「ツバサがやるなら俺もやるよ」みたいな態度で芸能人を始めて、才覚も特にないので結局裏方みたいな仕事に終始し本当に主人公なのか?と思わされました。そしてこんなイツキの人望が厚いのも違和感しかありませんでした。付いていかないでしょうこんな人に。

 オープニングから突如ツバサがオーディションを受けていてそのまま事件が起こり、なし崩し的に芸能事務所に入る展開になったこともよくわからない芸能界ストーリー展開になった一因としてあるかなと思っていて。いつの間にかミラージュマスターになってたトウマも含めて初期三人の関係性をもう少しオープニングで描くべきだったと思うんですよね。敵対していた人物が突然掌クルーッして仲間に加わったり、黒幕の人物が結局何をしたかったのかよくわからなかったり…。制作陣的には終盤の怒涛の展開に驚いてほしかったんだろうなというのが透けては見えました。

●異様にハイクオリティなアニメーション

 アニメーションムービーが随所に挿入されるのですが、そのクオリティーの高さにびっくりしました。透明感があってCGとアニメがうまく融合された文句なしのデキでした。芸能界が舞台ということでavexと提携して音楽、歌にかなり力を入れているというのも伝わりました。だからこそムービー鑑賞モードやサウンドモードが存在しないことに驚きを隠せません。さすがにゲームクリアしたら出現するものと思っていましたが…(しませんでした)。

●とにかくテンポの悪いゲームデザイン

 FEでお馴染みのチキが「カルネージ・ユニティ」(武器開発)、「レディアント・スキル」(ステータス向上のパッシブスキルやフィールドスキルの取得)、「クラスチェンジ」(上級職への転職)を担当しています。一言で言えばチキに役割を背負わせ過ぎです。特に武器を作れるカルネージ・ユニティですが、武器の種類も豊富で開発に必要な素材が手に入るごとにご丁寧にお知らせしてくれるのですがこれが逆にアダとなっていて非常に煩わしく、武器のレベルも比較的簡単に上がってしまうためダンジョン探索とチキのいる場所を行ったり来たりすることを強いられます。既存の武器も+1、+2と強化することで新スキルを覚えたりスキルの再取得が容易だったりとシステムそのものは悪くないので、せめてカルネージ・ユニティだけでもメニュー画面で出来て良かったんじゃないかと思うんですよね。

 ゲームパッドを使ったLINE風のコミュニケーションツール「TOPIC」は試みとしては面白いんですけど。一方的に大量に送り付けて来られる(しかも殆どがどうでもいい内容か催促メール)挙句ほぼすべて既読スルーすることになる仕様がちょっと異様に映りました。簡単な返信機能くらい付けるか、もう少し送られてくるメールの頻度を減らしても良いかと。あと作れるようになったユニティのお知らせメールは未承諾広告メール宜しく大量に送り付けられてくるのでこれは何とかしてほしかったですね。

●マップの作りこみが素晴らしい

 渋谷や原宿など実在の都市は、そこを歩いたことのある人からするとよくできてるなあと思わせるデキ。またダンジョンもバリエーションに富んでおり景観もマップごとに異なるため複雑な構造のマップでも探索が飽きませんでした。ただ仕掛けはいつものアトラスRPG宜しくやや難しめに感じました。ごり押しというか総当たりでも行けなくはない程度の難易度ではありますが基本的にはノーヒントなのでもう少し救済措置(それこそTOPICで仲間がヒント出してくれるとか)あっても良かったかもしれませんね。

●全部こなすこと前提のサイドストーリー

 イツキ以外のキャラクターにそれぞれ三話ずつ用意されています。内容はまあ…お察しですね。キャラの掘り下げと意外な一面を見せるという点では良かったと思いますが、お使いか敵を一定数倒すだけのものが殆どでちょっと味気ないかなというのが正直なところ。結局全員分やらなければキャラの強化ができないという点とサイドストーリーを発生させるためにはそのキャラのステージを上げないといけない(バトルで活躍させないといけない)のはやらされてる感強くてなんだかなあと。なぜか毎回チキのところでレディアントスキルを作らないといけないのも手間でしかなく、時間だけがかかった印象です。

●総評:アトラスRPGとしては合格点。コラボとしては微妙。

 想像ですが、おそらく本作はコラボを条件に任天堂からの資金援助か開発援助があったんじゃないかと思います。それを存分に感じさせる作りこみは十分に感じることができました。ただ、だからこそ個人的にはもっとFEに擦り寄ったゲームデザインにしても良かったんじゃないかと思うんですね。それこそ従来のFEの舞台で芸能を復活させる、くらいの思い切った設定でも。現代の東京を舞台にするのは「いつものメガテン」ですし、芸能界を題材にするストーリーを描くのは何もFEと無理やり結び付けなくても別の機会でも出来ることですし。もっとFEらしさを前面に出しても良かったんじゃないかと思います。

 というのも、ここまで述べた通り結局メガテン:FE=8:2くらいなんですよね。FE要素と言えば三すくみとFEのキャラが出てくることとまさしく取ってつけたような終盤の展開くらいで、FE要素を期待してもおそらく満足できないと思います。逆にアトラスRPG(特に先頭部分)が好きな人は細かい不満はあれど絶対にプレイして損はない仕上がりです。ディスク版だとロード時間がやや気になりますがDL版だとやや短縮されるようなのでこれからプレイを考えている方はDL版も検討してみてはいかがでしょう。

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